前回、開業に至るまでのスケジュールについて触れました。
続きまして、開業後のスケジュールをご案内します。
あくまでも一般的な一例ですので、個別具体的なスケジューリングは顧問税理士に相談、顧問税理士が決まっていない方は私にご相談ください。
例:2024年9月、個人事業として開業の医院を想定します。
~開業までに準備しておきたいこと~
- 経営理念の策定
経営理念によって、医院の方向性が決まります。
なぜ、独立してご自身の医院を持とうと思ったのか。
経営理念を持つことによって、顧客に対する姿勢、採用基準・教育基準に軸を持てるようになります。
どのようにして顧客、スタッフ、業界に貢献したいか。どんな院長になりたいのか。どんな獣医師でありたいのか。
このタイミングで一度、言葉で整理してみてはいかがでしょうか。 - 雇用契約書、就業規則の作成
実際にスタッフを採用する前に、少なくとも草案は準備しましょう。
社会保険労務士の先生と相談することをオススメします。
労働基準法や最低賃金の考え方など、ここ数年で雇用に関するルールは複雑化、厳格化されました。プロの見識を入れないと危険です。
また、キャリアアップ助成金等、雇用に関する助成金で利用できるものはないか確認するのがよろしいでしょう。
※YFPクレア渋谷オフィスでは、経験豊富な社会保険労務士の先生と締結しておりますので、ご紹介差し上げます - 顧問税理士の決定
顧問税理士は必須です。
会計帳簿と申告書の作成だけの請け負う税理士もいますが、動物病院には合いません。
定期的な面談をしてくれて、相談できる税理士がおすすめです。
契約前に、何人かご面談してみて、ご自身との相性の良さそうな税理士を選んでください。
契約前に面談してくれる人と、実際に貴院を担当する人が別という場合もあるので、必ず確認してください。
その際、弊社・YFPクレア渋谷オフィスもぜひ、候補にいれてください(^o^)/
~2024年~
9月 開業
・健康保険・厚生年金保険・労働保険の加入手続き
健康保険・厚生年金は、個人事業主で雇用するスタッフさんが5人未満である場合、加入“義務”はありません。
このため、ひと昔前であれば、小規模な動物病院さんでは社会保険未加入の医院も多くありました。
スタッフさんの給与にかかる社会保険料の半分は事業主負担となり、この負担がばかにならないためです。ざっくり、給与の額面の15%くらい分コスト増になる、とイメージしてください。
しかし、現在はとにかく人手不足の時代。
社会保険完備は、良い人を採用するためには必須と考えた方がよろしいかと思います。
・税務署、県、市へ各税務関連届出書提出
青色申告の承認申請等、期限内に提出しないと特典を受けられないものもあります。ご注意ください。
以下、代表的なものをご紹介します。
【個人事業の開業届出書】
個人事業を始めたことを税務署(=国)に報告する届出書です。
【青色申告の承認申請書】
所得税の申告を青色申告で行うことを申請するための届出書です。
青色申告は経費や赤字の繰越等で、優遇されます。
【給与支払事務所等の開設届出書】
従業員やご家族に給与を支払う事業所が出来たことを税務署に報告するための届出書です。
【源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書】
源泉所得税は原則、毎月、預かった月の翌月10日までに納付する必要があります。
1~6月分の源泉所得税はまとめて、7月10日までに納付、
7~12月分の源泉所得税は年末調整した上でまとめて、1月20日までに納付
といったことが出来るようになり、手間が減り、また、資金繰りの観点からも有利になります。
11月頃
決算予測・納税予測を行います。医院の経営の状況によって、対策を考えます。
12月
・年末調整
税務署にスタッフさんの給与から天引きした源泉所得税(7~12月分)を納付します。
スタッフさんには、源泉所得税の還付(返金)又は追加徴収します。
※事前に、スタッフさんの保険の控除証明書や前職の源泉徴収票(2024年分)を徴収しておくとスムーズです
~2025年~
1月
・償却資産にかかる固定資産税の申告
毎年1月1日時点で所有している事業用の設備等を、市区町村に申告します。
動物病院の場合、一医院につき、おおよそ30~60万円くらい、償却資産に対する固定資産税が課税されます。実際の納付は5月以降になります。
・法定調書、給与支払報告書を提出
支払ったお給料や家賃、税理士等への報酬について報告します。
3 月
・確定申告
2024年の勤務時代の給与所得(サラリーマン時代の給与)、
2024年の事業所得(開業してからの利益等)
を申告します。
個人事業の場合は、決算期間を自分で決めることはできず、一律12月決算になります。
毎年、1~12月の経営の結果に基づいて確定申告を行います。
4月
20日くらいに上記の確定申告にかかる所得税が引き落とされます。
5 月
先⽣及びスタッフさん分の住⺠税の納付書が届く(2024 年の収入で計算されます)
先生は普通徴収(ご自身で納付)、スタッフさんは特別徴収(給与から天引きして納付)になります。
7 月
算定基礎届、労働保険申告書提出
スタッフさんの1~6月分の源泉所得税納付
10~11月
決算予測・納税予測を行います。医院の経営の状況によって、対策を考えます。
12 月 年末調整
スタッフさんの保険の控除証明書等(2025 年途中入社のスタッフさんは前職の源泉徴収票)を収集
7〜12月分の源泉所得税を納付
~2026年 ~
1月~7月 2025年と同じ
8 月 法人成りシミュレーション
10 月 法人設立準備開始
11 月か 12 月 法人設立
12 月 法人として年末調整、源泉所得税を納付
【検討事項】
個人事業時代 検討事項
- 保険見直し(収入保障、がん罹患や障がい者になった場合の保障)
- 小規模企業共済
- 車両等の経費算入(割合)
法人成り後 検討事項
- 社宅検討
- 退職金準備を兼ねる生命保険
- 先生及びスタッフさんの退職金制度(企業型確定拠出年金やはぐくみ基金)
- 2期目から倒産防止共済(これも退職金対策)
- その他、法人契約生命保険、損害保険
投稿者プロフィール
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税理士
税理士法人YFPクレア渋谷オフィス オフィス長
1979年埼玉県生まれ。
獨協大学 法学部卒
2008年株式会社YFP総合会計入社(2009年税理士法人YFPクレアへ転籍)
入社以来、多くのスタートアップ企業の創業に携る。
得意分野は金融機関対策、事業計画、事業承継。
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